キャビテーション|特別養護老人ホーム「ふくろうの杜」 スタッフブログ

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キャビテーション

2015年10月29日

キャビテーション

 ダイエット用品の関係で、「キャビテーション」という言葉を聞いたことはありませんか。日本語では「空洞現象」といって、船のスクリューや魚雷の爆発などにより、瞬間的に液体の圧力が下がり気泡が発生する現象です。特に船のスクリューは気泡が生じることによって「空回り」状態に陥り本来の性能を発揮できないばかりか、これに伴う破壊力によって破損することさえあります。この破壊力がけっこう大きく、たとえば魚雷では爆薬による破壊力よりも空洞現象による破壊力のほうが大きい事が分かっています。

 実は、日常的にも頻繁に発生する現象で、たとえばホースで水をまく時に、そのホースが折れていたりするとホースの中で「シュー」と音がする事がありますし、あるいはヒトが関節を曲げると「ポキ」と音が鳴る事があります。これらは空洞現象の音なのです。そして、関節を曲げた時に起きる空洞現象はごく小さな骨折を起こし、何度も関節を鳴らしているとやがて骨が驚異的な回復を起こして関節が太くなっていく事があるそうです。

 先日、新たに1名の入居者様が旅立たれました。謹んでご冥福をお祈りいたします。遺されたご家族様はもちろんのこと、ケアに関わってきたスタッフにとりましても、心の中にぽっかりと空洞ができたような気持ちがするものです。この破壊力もまた凄まじく、ほんの数か月前に異動してきたばかりのスタッフにとっても、特別な感慨がありました。また、特に熱心だったスタッフでは、空洞が大きくなりすぎて心が空回りするような場合もあります。しかしながら、関節を鳴らして骨が少しずつ太くなるように、こうした感慨はスタッフを成長させてくれるものです。

 19世紀末に発見された空洞現象は、それまでに船のスクリューが発明されていなければ発見できず、空洞現象が発見できなければホースの音や関節の音の原因は謎のままだった事でしょう。技術・知識ばかりでなく、人間性・精神性についてもまた、同じことが言えるのだと思います。人は、何かを残して旅立ち、それを受け取った人々を成長させてくれるのでしょう。それが、その人が生きた証なのだと思います。

 こぶじろう8号でした。

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